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最高裁判所第一小法廷 昭和48年(オ)357号 判決

主文

理由

上告代理人熊谷正治の上告理由第一点について。

裁判所が証拠を排斥するにつき、排斥する理由を一々説示する必要のないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二二年(オ)第二七号同二三年二月二七日第三小法廷判決・裁判集民事一号八三頁、昭和二五年(オ)第一五号同二九年二月一八日第一小法廷判決・裁判集民事一二号六九三頁、昭和三〇年(オ)第八五一号同三二年六月一一日第三小法廷判決・民集一一巻六号一〇三〇頁参照)。そうすると、原審が採用しなかつた証拠について所論のように判示しても、なんら所論の違法はない。また、所論引用の各判例は、事例を異にして本件に適切でない。それゆえ、論旨は採用することができない。

同第二点について。

原判文によれば、原審は、訴外黒嶋久美と被上告人との間でそれぞれ買受地の一部を交換することとし、坪数が等しくなるよう一〇三番及び一一六番の土地からそれぞれ一〇三番の二(本件土地)、一一六番の二を分筆した旨を認定し、交換の対象となる一筆の土地の一部が分筆のうえ特定された旨判断しているのであるから、右認定判断の過程には所論の違法はなく、また、所論引用の判例の趣旨に反するものではない。それゆえ、論旨は採用することができない。

同第三点について。

原審が適法に確定した事実によれば、上告人らの先代黒嶋久寿は訴外黒嶋久美と被上告人間の本件交換契約に基づく久美の権利義務を承継することを承認したというのであるから、被上告人の本件土地の所有権移転登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有する第三者に該当しないものと解するのが相当である。原判決には所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第四点について。

所論の点に関する原審の判断は、首肯しえないものではなく、その過程に所論の違法は認められない。それゆえ、論旨は採用することができない。

(裁判長裁判官 岸上康夫 裁判官 大隅健一郎 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一)

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